密室の恋人

 凛子はおもむろに蒼汰をソファに押し倒すと、馬乗りになり、殺られるっ! と身構えた蒼汰の上で、そういえば、さっきから持っていた油性マジックの蓋を開けた。

 蒼汰の額に、冷たいものが当たる。

「ばっ、莫迦、凛子っ。
 なに書いてんだ、お前っ」

「だって、陸人さんがおかしなことばっかり教えてくるからっ。
 お祓いですっ」

「呪い……」
という声がした。

 見ると、社長と堀田と女性秘書が立っていた。

 社長が苦笑いして、こちらを見ている。

「蒼汰、額に呪いって書いてあるが、なにをした」
と訊いてきた。

 凛子が、あら、と笑う。

「祝って書いたつもりだったのに」

「……本心が出たんじゃないのか」

 っていうか、祝いって書いて祓えるかっ、と言うと、
「だって、お祓いの言葉とか知らないですもん」
と言いながら上から降りると、堀田に、

「あ、すみません。
 さっき渡すの忘れてました。

 これ、頼まれてた油性ペンです」

 はい、と今、呪、と書いたばかりのペンを差し出す。

 堀田は受け取りたくなさそうだった。