密室の恋人

「こんな風に弄ばれて捨てられて」

「待て。
 お前、俺と結婚するんだろうが」

「そんなことばっかり言って。
 貴方、何処まで本気なんですか」

 いじけたように洗面台に背を預けて座っていると、蒼汰が前に屈んだ。

「最初から全部本気だが」
と言いながら、側に手をつき、凛子の後ろ頭に手をやると、口づけてきた。

「凛子」
と間近に呼びかけてくる。

「俺のことは好きか」

「そこは、嫌いか、とか訊くとこじゃーー」

 まあ、もういいです、と凛子は諦めたような溜息をもらした。

「嫌いじゃなかったんですけどね……」

 好きなのは、この人の横の人だが、蒼汰自身のことも、そう嫌いではなかった。

 だが、今はわからない、と思っていた。

 蒼汰が強引過ぎて、思考も感情もついていっていないから。

「ところで、もう帰ってもいいですか?」

 家に帰って、お風呂に入って、頭の中も全部リセットしたい、と思ったのだが、蒼汰は、

「帰るって何処へ?」
と訊いてくる。

「え、家にですよ」

「家には帰れないぞ」

「……なんでですか」

 眠っている間に、日本列島が沈没したとでも言うのだろうか。