頼まれた備品を手に、廊下を歩いていた凛子はエレベーターの前がざわついているのに気がついた。
「どうかしたんですか?」
と手近に居た男性社員に問うと、
「エレベーターが動かないらしいんだよ」
と教えてくれる。
「えっ」
「途中で止まっちゃったらしくて。
今、守衛さん呼びに行ってるみたいなんだけど」
あっ、と誰かが声を上げた。
エレベーターの階数表示が動き出したからだ。
それはこの回で止まり、すぐに扉が開いた。
中から出てきたのは、蒼汰ひとりだった。
「伊月、乗ってたのか」
「大丈夫だったか? 蒼汰」
とみんなが口々に訊いていた。
「大丈夫です。
一瞬、中が暗くなったけど」
と言う蒼汰に、
「それ、全然大丈夫じゃねえよ」
と誰かが言っていた。
「このエレベーターさあ。
この間もなにかあったって聞かなかったか?」
「もう替えどきなんじゃねえの?
堀田さん、社長に言ってよ」
たまたま居たらしい男性秘書の堀田が頼まれ、ええーっ、と言っている。



