密室の恋人

「どうしたいって」
と洗面台にすがったまま、凛子は彼を見上げた。

「え……、えーとですね。
 まず、二人でデートとかして」

「昨日、したよな?」

 ああ、一応したか。

「お互いのことを話したりとかですね」

「昨夜話した。
 お前が覚えてないだけだ。

 なんなら、もう一度、してやろうか」

 なにが訊きたい? と言うが、改めて問われると、自分でもなにが訊きたいのかわからない。

「ああ、えーっと。

 電車とか好きなのはわかりました。

 他に好きなこととか、時間を忘れるほど、夢中になってることとかないですか?」

「仕事」

「……盛り上がれません」

 その話題で、話が弾むわけもないだろう、と思った。

 いや、それにもう、今更、こんなこと訊いていても、無駄な気がしていた。

 蒼汰との関係は記憶もないまま、進んでしまっている。

 床に手をつき、
「私、今まで、真面目に生きてきたのに~」
と嘆くと、

「そうみたいだな」
と言う。

 なにがそうみたいだなのか、深く考えたくはなかった。