密室の恋人

「だって誰かがあいつ繋ぎ止めておかないと、私もまたフラフラするかも」

「ええっ」

「被害者が出るし」

 ああ。
 あの電車の子みたいに、と思った。

「いや、上村さんには世話にはなってますけど。
 そんなことまで、責任は取れませんよ」
と言うと、

「薄情ねえ」
と言い出す。

「あの、千尋さん、誰視点で語ってますか」

「上村の何処が不満なのよ」

 ええっ?

「伊月蒼汰なんて、誰もが好きになるような男。
 他の誰かに任せなさいよ」

 い、いやいやいやいやっ!

「かっ、上村さんだってモテますよ。
 格好いいし、大人だし、落ち着いてて一緒に居て、ほっとできるしっ。
 楽だしっ」

「あっ、そう。
 じゃあ、問題ないじゃない。

 よろしくね。

 あら~、伊月くん」
と千尋は凛子の後ろに向かい、手を振った。

 えっ、と振り返る。