密室の恋人

 昨夜、何度かそう呼んだような記憶が。

 なにかもう、嫌な予感しかしないのだが、と思ったとき、
「予言してやろう」
と真横に座る蒼汰が自分を見下ろし言った。

「お前は絶対に酒で失敗する」

「いや、あのーー

 もう失敗してますよね、確実に……」

 幸い、なんとなく服は羽織っていたが、此処に来たときほど、きちんともしていない。

 ひとつ息を吸って覚悟を決めたあとで、蒼汰の横をすり抜け、洗面所に駆け込んだ。

 鏡を見て、悲鳴をあげる。

 胸許のボタンは外れていて、耳たぶの少し下、首筋にうっすら淡いピンク色の痕が残っている。

「なんてところにつけてくれたんですかっ。
 会社に行けない~っ!」

 冬なら、服で隠れるが、まだ、首許を隠すような服を着るにはおかしな時期だし、変に隠すと、すぐにみんなが深読みをする。

「今日は土曜だぞ」

 土、日と、二日あるが。

「い、一日、二日で消えますか? これ」

 恐る恐る指で触れながら問うてみたが、さあ? と蒼汰は他人事のように言う。

 ピカピカの洗面台に縋り、項垂れていると、後ろに立った蒼汰が言った。

「心配するな。
 責任はとってやる」