密室の恋人

 ベッドの枕を外して、そこに座る。

「よいしょ」
と蒼汰の頭を抱え、膝に乗せてみた。

「さあ、寝てください」

「さあって、寝られないよ」
と彼は苦笑する。

「はい、目を閉じてー」
と両の瞼を手で下げるように抑えてあげると、

「なにそれ、催眠術?」
と笑っていた。

 だが、布団をかけ直してあげると、彼はおとなしく目を閉じる。

「おやすみなさい、……えっと。

 そういえば、名前、なんて言うんですか?」

 呼びかけようとしたがわからず、問うと、彼は、
「知らない。
 忘れた」
と言う。

「嘘ですよね」

 そう言うと、彼は、こちらを向かないまま、嘘だよ、と言う。

「なんで言わないんですか?」

「今、君は僕の名前を知らないから。

 まだ、蒼汰と同じ顔の人、というぼんやりとした認識しかない。

 だけど、名前を知ったら、はっきり僕が僕という人格を持って、君は僕と蒼汰は別人だと自覚する。

 そしたら、もう……」

 こういうことはしないんじゃない? とこちらを見て言った。