密室の恋人





 自宅に戻った弥は、ベッドサイドのテーブルに携帯を投げようとして、メールが着信していることに気がついた。

 千尋からだった。

『ごめんなさい』
とだけ書いてある。

 溜息をついて、それを投げた。

 でもまあ、面白かったからいいか、と思っていた。

 凛子ちゃんも蒼汰くんも、見ていて飽きない。

『なんで、急にそんな気になったわけ?』

 あのホテルで千尋にそう訊いた。

 並んでベッドに腰掛けた千尋は言う。

『今まで、貴方が誰と付き合ってても気にならなかったわ。

 でもそれはたぶん、貴方が誰にも本気じゃなかったから』

 その言葉に、弥は目を閉じた。

『……ありがとう、園田。
 教えてくれて』

 一度だけキスしたあと、千尋は帰ると言い出した。

 自分も引き止めなかった。

 閉まった扉を見ながら、もう二度と、彼女を千尋と呼ぶことはないだろうな、と思っていた。