密室の恋人

「とりあえず、上村さんは幸せになれない」

「なんで、そんな薄情なことを言うんですかっ」
と蒼汰のネクタイをつかんでしまう。

 蒼汰を溜息をつき、その手を払いながら言った。

「今、上村さんに幸せになられたら、俺が困る。

 あの人、貝塚さんを好きだなんて、嘘だよ。

 お前が好きなんだ」

「そんなことないですよ」

「お前のそういう、とぼけたところは嫌いじゃないが、程々にしとかないと、危なっかしくって、見てられない」
と少々厳しめの声で言い出す。

「大丈夫ですよ、上村さんは」

「それだよ」
と蒼汰が睨んだ。

「俺が今回のことで最も気に入らないのは、それだ。
 お前のその上村さんに対する信頼感」

「信頼っていうか……」

「いや、現時点で、俺よりあの人の方が信頼されてる気がする。

 隙あらば、二人でコソコソしてるし」

「いや、だからそれは、蒼汰さんに内緒でエレベーターのこと調べてたからで」

 だが、なにもかも蒼汰が知ってしまった今となっては、もうなにも隠す必要はなくなったのだが。

「……なに笑ってる?」