密室の恋人

 そのまま、お湯のたまる音を聞きながら、蒼汰の胸に寄りかかっていた。

 いろいろあったけど、今、この瞬間は幸せだな、と思う。

「こら」
と蒼汰に頬をはたかれた。

「寝るな」

「いや、なんか蒸気があったかくて気持ちよくて。

 私、もしかして、緊張してたんですかね?

 ちょっと頭の隅で思ってたんですよ。

 上村さん、死んじゃわないかなって」

「あの人、死ぬようなタマか?」

「だって、千尋さんに何回も振られてるんですよ。

 かなり自業自得だとは思いますけど。

 私だったら、蒼汰さんに振られたら、死んじゃいます」

 頭をよぎったのは、あのエレベーターの人だった。

 あの人だって、死にたくはなかったはずだ。

 将来なりたいものもあったろうし、好きな人も居たかもしれない。

「みんなで幸せになれたらいいのに」

 そう呟いたが、蒼汰はあっさりと、
「無理だろう」
と言った。