密室の恋人

「やだ、ちょっとっ。
 離してください〜っ」

 でも、放り投げないでっ、と思った。

 背中から床に叩きつけられるとか勘弁だ。

 蒼汰はそのまま浴室に行くと、浴槽に凛子を放り込み、頭からシャワーの水をかけてきた。

「ひゃっ」
と水を手で払おうとするが、当たり前だが、追いつかない。

「なにするんですかっ、もう〜っ」

「滝行だ。
 乱れた心をまっさらにして、悔い改めろ」

「なにも乱れてませんってばっ」
と言っているうちに、シャワーは最初の水の部分がなくなり、すぐお湯になった。

 蒼汰が浴槽に栓をしたので、お湯が少しずつ溜まってくる。

「あ、あったまって、いい気持ちになってきた」
と言うと、蒼汰はついに笑い出した。

 人に水かけておいて、なに笑ってんだ、この人は、と思う。

 だが、蒼汰はシャワーを手にしたまま、まだ睨んできた。

「お前、他の男とホテルに行ったら、普通、こんなもんじゃすまないぞ」

「だって、今回はちょっと違うじゃないですか」
と言うと、

「じゃあ、お前、俺が他の女とホテルに行ったらどうする」
と訊いてくる。

「殺します」

 あまりにあっさり言ったので、蒼汰は一瞬、理解できなかったようだ。

「は?」

「殺します」

 二回繰り返すと間抜けだな、と思いながら、凛子は言った。