密室の恋人





 本当に居た。

 蒼汰は半ば呆れ気味に、二人で歩いてくる凛子たちを見ていた。

「蒼汰さーん」
と笑顔で手を振ってくる。

 少し嬉しそうだ。

 ……凛子。

 相変わらず、不可解な女だ、と蒼汰は項垂れる。

 別の男を迎えにホテルに行って、彼氏に迎えに来させるってどういうことなんだ。

 まあ、凛子にそう文句を言えば、蒼汰さんと迎えに行きたかったのに、蒼汰さんが居なかったから、と言ってくるのだろうが。

 凛子の人の良いところは嫌いではないが、いささか、無防備がすぎるというか。

 だが、無防備すぎて、弥も手を出しづらいのだろうとは思っていた。

 窓を開け、助手席に手を置くと、身を乗り出して、凛子たちと少し話した。

 とりあえず、平静を装って。

 凛子がドアを開け、弥と乗ってくる。

「ごめんね、蒼汰くん。
 また園田にフラれちゃって、ちょっと厭世的な気分になっちゃってさ」

「いい加減、懲りてくださいよ」

 この人もなんだか憎めないんだよなあ、と思いながら、蒼汰は力なくそう言った。