密室の恋人

「可哀想に。
 幾ら頭が良くて、イケメンでも、これだけ浮き世離れしていては。

 やっぱり、浮き世離れしたお嬢様のお嫁さんでももらうのかなあとか、思ってたんですよ、さっきまで」

「俺の嫁はお前だろう。
 それより、お前、相当酔ってるな」

 ロクでもないことばかり言いやがって、と蒼汰は愚痴ったようだった。

 その瞬間、今、自分はなにを言ったのだろうな、と思っていた。

 右を向いて、左を向いたら、右を向いてたときのことが思い出せない。

 そう思いながらも、
「いえ、船には酔ってないですよ」
と言うと、

「酒にだよ……」
と呆れたように言われる。

「あのね、伊月さん」

「蒼汰」

「蒼汰さん、負けず嫌いもいいんですけど。
 他人を巻き込むのはどうかと思いますよ」

「なんの話だ」

「結婚の話ですよ」

 蒼汰は買ってきた酒を手に取り、天井の明かりにその瓶を照らして、物珍しそうに眺めたあとで、

「ちょっと違うな」
と言いながら、開けていた。

「そのお酒がですか?」
と言うと、莫迦か、と言われる。