廊下にずっと立ってるのも変だしな、と思い、中に入った凛子は、部屋の中を見回し、呟いた。
「結構、普通の部屋ですね」
簡素で落ち着いたインテリアだし、一般的なホテルと特に違いはないように思えた。
違うところは、時間制で借りられるところだけだろう。
「此処はね。
だって、鍋鍋鍋だから」
と弥は笑う。
「宿が取れなかった家族連れなんかも泊まったりするみたいだよ」
へー、と言いながら、ちょっと、ほっとしていた。
場違い感が薄れた気がしたからだ。
「それにしても、なんだって、千尋さん、今更、上村さんと……」
「その言い方、物凄い気になるんだけどね」
上村さんなんかって幻聴が聞こえたんだけど、と弥は言う。
いや、幻聴ではない。
悪い人ではないのかもしれないが。
いつか、がつんと言ってやろうと思っていたのだ。
他の誰のためでもない、上村さんのために。
まあ、かなり余計なお世話だろうが。



