ホテルにたどり着いた凛子は言われた部屋番号のドアをノックする。
「上村さん。
帰りますよー」
と呼びかけると、
「あのねえ」
とすぐにドアが開いた。
「こんなところで、大きな声で名前呼ぶ人、初めて見たよ」
そう言いながら、いつもと変わらぬ様子の弥が姿を現す。
本当に落ち込んでるのか? と訝しむ。
「よく来れたね、此処まで」
と言う弥に、
「それ、どういう意味で言ってます?」
と確認した。
よくぞ、こんなところまで来たという意味か。
それとも、よくぞ、迷わずに来たという意味か。
どうも後者だったらしい。
「初めてじゃないの?
こんなところに来たの」
「そうです。
だから、知り合いが具合が悪くなったから迎えに来てくれって言うので、と言って、入り口で掃除のおばちゃんに訊いてやって来ました」
と言うと、弥は笑い出す。



