密室の恋人

 船はそのまま、工場のある湾岸沿いを走ってくれるようだった。

「そういえば、庶民的に電車に乗ったんでしたよね。

 なんで、こんな船に乗ってるんでしょうね」

「電車も船も楽しいだろ。
 だからいいんだ」
と自分が、普通のデートをしたいとか言ったくせに、蒼汰はそうざっくりとまとめて来た。

 ちょっと考え、凛子は、
「……まあ、いいか」
と呟く。

「そうですよねー。
 楽しいんだから、別になんでもいいですよね」
とピンク色のラベルの可愛い小瓶を手に取った。

 これ、美味しいのよ、といつか、千尋が言っていたが、まだ呑んだのことない酒だった。

「お前のその適当なところ、嫌いじゃないぞ」
と言う蒼汰に、いや、貴方に言われたくないんですけど、と思いながら、その酒をグラスに移し、口にした。

 正直、レストランに居るときは、蒼汰が言うように、ほんのり酔っていたのだが、埠頭の風に吹かれて、目が覚めていた。

 だから、少し油断していた。

 つい、甘い酒を多めに口にしてしまう。

 なんの話をしていたのか。

「貴方は意外と普通の男の人ですよね」
と言ったことは覚えている。