密室の恋人

 



「でさ、言ってやったのよ。
 夫をやめるか、煙草やめるか、どっち? って」

「相変わらずですねえ、千尋(ちひろ)さん」

 お昼休み、空いている小会議室で、みんなでコンビニ弁当を食べていた。

 既婚者の貝塚千尋が結婚生活のグダグダを語っている。

 いろいろ問題も多そうだが、何処か楽しそうにもある。

 結婚か。

 いつかするのかな。

 誰とするのかな。

 ……とりあえず、霊とは出来ないような気がするが。

 にっこりと優しげに微笑むエレベーターの霊を思い出していた。

 伊月さんと同じ顔なのになー。

 表情違うとあんなに繊細そうに見えるんだなあ、と変な感心をしたとき、千尋が、

「ちょっと凛。
 なんで、サンドイッチ睨んでるのよ」
と言ってきた。

「いや、喉が渇いたな、と思って。

 全部飲んじゃったから」
と長机の上の紅茶の缶を見ると、美晴が、

「私のあげようか」
と炭酸飲料を向けてくる。

「いやー、大丈夫。
 次はカフェオレがいいし。

 ちょっと買って来よっと。

 誰かいりますか~?」
と言ってみたが、みんな、いい、と言う。