「今更、そんなこと訊いてどうするの?
僕と不倫でもしてみる?」
弥の声が階段に静かに響く。
うーむ。
死ぬほどまずい場面に出くわしてしまった。
階段を上がっていた凛子は、千尋が上の階に現れたのを見て、一緒に上がろうと追いかけてきたのだが。
出るにも出られず。
誰か来て、この現場を見てしまうのではないかと気になって離れることも出来ずに、下でわたわたしていた。
「別に断らないけど」
と彼女の側まで下りていき、弥は千尋の長い髪を一房すくい上げると、自分の鼻先に寄せる。
「相変わらず、いい匂いだね、千尋」
この人、匂いフェチなのか? と思っている間に、千尋がその手を払った。
「僕、結構凛子ちゃん好きだよ。
だって、彼女となら、あの曲聞いて嫌じゃなかったから」
「あの曲?」
そこで弥がちらとこちらを見た。
慌てて凛子は隠れる。



