密室の恋人

 



 昼休みの少し前、営業に行こうとした弥はエレベーターの前で足を止める。

 大丈夫だとは思うけど。

 凛子ちゃんもああ言ってるし、やっぱりやめとくか。

 ってことは、これからは僕もずっと階段?

 もう誰か呼んで除霊してもらったらどうだろう、とか、つい考えてしまう。

 仕方なく階段に行くと、下の踊り場にバインダーを手にした千尋が立っていた。

 こちらを見上げて言う。

「ねえ、凛子が妙なこと言ってたんだけど。
 あの金曜の夜、私と連絡取れなかったって。

 嘘よね。
 私、早くにメールしたわよ。

 電話じゃ聞こえないかと思って」

「そうだね」

 あのとき、携帯が光って、メールじゃないのかと凛子に問われた。

 確認した自分には、それが千尋からの返事だとわかっていたけれど、凛子には、宣伝だ、と言ってそれを閉じた。

「どういうつもりなの?
 凛子は伊月蒼汰と月末には結婚するつもりらしいわよ」

 嫌がらせはやめて、と言う千尋に、
「嫌がらせじゃないよ。
 単に凛子ちゃんと居たかっただけ」
と弥は言う。