密室の恋人

「いやいやもう、上村さん~」
というやりとりをして、遅刻しないかと部署の方を見る。

 その手前にある給湯室にから、千尋が覗いていた気がしたが、その影はすぐに消えた。

「そうだ、凛子ちゃん。
 今度、一緒に鍋食べに行こうよ」

「なんでこの季節に。

 ……なんでですか」

 あまりに爽やかに言うので、騙されそうになった。

 一拍置いて、弥の言う意味に気づいた凛子は、上目遣いに睨んでみせる。

「だってさー、言ったじゃん。

 途中で蒼汰くんと彼が入れ替わってるんじゃないかって。

 凛子ちゃんって、どうせ、蒼汰くんが初めてでしょう?」

 どうせってなんだ……。

「他の人知らないから、入れ変わってるかどうかもわからないんじゃない?

 僕が教えてあげるよ」

「いや、教えていりませんから。

 めちゃくちゃ親切そうに言わないでください。

 騙されそうになるじゃないですか」
と言うと、

「騙されてよ」
と言う。