「私は今、激しく後悔しています。
このお酒を買ってきたことを」
バーカウンターのあるメインサロンのテーブルにはコンビニで買ってきた酒が並んでいた。
似合わない。
この部屋に。
湾曲した広いソファで、蒼汰は凛子と少し距離を置いて座っていた。
蒼汰は、買ってきた酒の瓶をひとつ取って眺めながら、
「いや、いいじゃないか。
どれもカラフルで。
ひとつ、開けてみよう」
と結構楽しそうにしている。
「うーん。
まあ、そうですね。
せっかく買ってきたんですから、呑みましょうか。
って、呑みに来たんでしたっけ?」
そうだ。
夜景を見なければ、と気づく。
カーテンは閉まったままだった。
瓶を置いた蒼汰が立ち上がり、開けてくれる。
真っ黒な海と暗い対岸。
時折、車のライトが見える。
最初は角度的に見えなかったのだが、そのうち、工場の明かりが見え始めた。
「綺麗ですねー」
と凛子は呟く。
どんなイルミネーションより幻想的だ。



