密室の恋人

 そのまま前を見ている。

「……蒼汰さん?」
と呼びかけると、少し怒ったように、

「話しかけるな」
と言う。

「すみません」

 なにかまずいこと言ったかな、と思っていると、蒼汰は前を見たまま言った。

「今、話しかけるな。
 ちょっと……泣きそうになったから」
と言う。

 言葉につまり、一瞬あとに、凛子も泣きそうになった。

 年をとって思い返したら、なにやってんだ。
 若かったんだなとか思うかもしれないが。

 今はただ、蒼汰さんと出会えてよかった。

 そう思っていた。