密室の恋人

「なんでもないです」

 そう言ったとき、蒼汰がハンドルを持つ手で、斜め前を指差し、言った。

「ほーら、凛子。
 鍋、鍋、鍋だぞ」

「もう~。
 嫌味ですね~っ」

「入ってみるか?」
と蒼汰は笑う。

「今、鍋、食べたくありませんっ」
と言うと、

「俺もだ」
と言う。

「そうだ。
 今日、にゃー貸してくれないだろうかな、侑斗」

「あのー、にゃー、物じゃないんで。
 私もこの間連れてきてもらったけど。

 悪いから寝る前には返したんですよ」
と言うと、蒼汰は顔をしかめた。

「お前、侑斗とはいえ、夜遅くに会ったりするなよ」

「大丈夫ですよ。
 侑斗まだ仕事中だったのをちょっと抜け出てきてくれただけだし」

「どうせ無防備にパジャマででも出たんだろ」