密室の恋人

 



 槙村が手配してくれた操縦士が来るまで、凛子たちは、埠頭の辺りをウロウロして待っていた。

 夜になると、少しひんやりとしてくる。

「なにか買って乗るか」
と言う蒼汰に、

「おつまみとか?」
と言うと、

「まだ呑む気か」
と言われた。

「なんとなくですよ。
 クルーズといえば、お酒と夜景じゃないですか」

「酒は少しは乗ってるが」
と言う蒼汰に、

「いつも乗せてあるんですか?
 どうせ、高いお酒ばっかりなんでしょうねえ」
と言うと、なにか文句あるのか、と言われる。

「いえ、たまには、安酒もいいもんですよ。
 いろいろバリエーションがあって、可愛いし。

 安いお酒呑むとよく眠れるんですよ」
と言うと、

「安酒って、何処に売ってるんだ」
と言ってくる。

 えーと。
 改めて訊かれるとーー。

「……スーパーとかコンビニとか?」

 コンビニなら、近くにある、と言うので、歩いて買いに行った。