密室の恋人




 その日は前もって大学の友達、伊藤麻友(まゆ)と約束していたので、待ち合わせて、ご飯を食べに行った。

「今日はちょっとリッチに食べたいの」
と言う麻友に連れられ、行った店は、いつぞや蒼汰の母と行ったのと同じチェーン店だった。

「リッチで此処?
 チェーン店だよ」

「だって、此処高いじゃないの」

「まあ、そうだけど」

 だが、すごいレストランに連れていかれなくてよかった、とも思っていた。

 給料日前で、もうそんなにお金もないし。

 煉瓦風の落ち着いた内装の店で、食事をしながら、彼女の気になる人の話を聞く。

 今日は、あのとき、薫子が頼んだタンシチューを頼んでいた。

 いつもは頼まないメニューだが、美味しそうだったからだ。

 薫子のように優雅には食べられないが。

「でさ。
 今度、コンパすることになったんだ。

 凛子も来てくれない?」

「え、コンパ?」

 今の話の流れで何故、と思っていると、その彼を誘ってコンパをしたいのだと言う。