密室の恋人

「まあ、凛子ちゃんがいいんなら、それでいいけど。

 あーでも、やっぱりよくないなあ。

 僕の凛子ちゃんが、蒼汰くん以外の男に蹂躙されてるかもしれないと思うと」

「あのー、勝手に頭の中で話作って進めないでくださいね」

 USBメモリを引き抜き、凛子は立ち上がる。

「それから、私を好きだとか言うのは、千尋さん見て、ビクつかなくなってから言ってください」
と言ってやると、

「痛いとこつくね~」
と笑いながら言ってきた。

 もう本当に、この人の話はなにが本当かわかんないな、と溜息をつき、森田に礼を言って外に出る。

「ほら、上村さん、行きますよ」
とロビーで振り返り言っていると、ちょうど玄関から出て行こうとしていた弥の同期の男に見られた。

「あれ?
 上村、どうしたの?

 蒼汰の彼女の尻に敷かれて」

 なんで、みんな、そういう見方になるんだ〜と思っていると、弥が、
「そうなんだよ、凛子ちゃんひどいんだよ」
と同期に泣きつき始める。

「もう〜、上村さんっ」

 だが、弥が今、茶化してくれたおかげで助かった、とも思っていた。

 恐らく、そういう計算も働いてのことだろう。

 彼が、今、自分と弥が此処から出てきたことを訝しんで、蒼汰にしゃべらないといいのだが。

 そう思い、内心、ひやりとしていた。