密室の恋人

「この子が蒼汰さんに憑いてるんです。

 でも、この子っていうのはもう正しくないかも。

 私、たまに夢でこの人を見るんです。

 さっきは、エレベーターに蒼汰さんが居なくても現れました。

 グレーのスーツを着た姿で、すっかり大人になっていました。

 蒼汰さんと一緒に育ってるんですよ、この人」

 弥は目を細めて画面を見ながら、
「子供の姿のまま、此処に囚われているのにね」
と呟く。

「それは残像みたいなものじゃないでしょうか。

 彼が見せているのか、蒼汰さんの罪の意識が見せているのかはわかりませんが」

 弥にだけは、社長から聞いた話を教えた。

「で、どうするの?」
と弥は訊いてくる。

「どうって」
「お祓いでもしてもらう?」

「蒼汰さんも最初はそう言ってましたけど……。

 この霊の正体を知ったら、そうは言わないと思います」