密室の恋人

「君は薫子さんによく似ているね」

「……ひとつも似てませんよ」

 凛子の顔は、丸っとして、愛嬌がよい、という感じだ。

 鋭角的で整った顔の薫子とは全然違う。

「いや、その肝の据わったところがだよ。
 蒼汰は、既に尻に敷かれているようだし」

 いや、敷いてません……。

 が、人から見たら、そう見えるのか、とちょっとショックだった。

「蒼汰は、やっぱりマザコンかなあ」
と呟く。

「そ、その一言は聞きたくなかったです」
と言うと、社長は豪快に笑ってみせた。

「蒼汰でいいんだね。
 返品はきかんぞ」
と確認するように言ってくる。

「はい」

「あれはあれで、可愛い甥だから」
と言う社長に、やっぱりそうなのか、と微笑む。

 しょっちゅうひどい目に遭っていたと蒼汰は言うが、それは、社長が頻繁に蒼汰の許を訪れ、面倒を見ていた証拠だ。

「まあ、いろいろと問題はあるが、悪い子じゃないから」
とまだ蒼汰が幼い子供であるかのように社長は語る。

 ずっと見守ってきた人間からしたら、いつまでもそんな感じなのだろう。

「見捨てないでやってくれ。

 ……本当に返品はきかないから」

 繰り返しそう言う社長に、やっぱり、他人に押し付けたいだけかも、とちょっと思った。