莫迦となんとかは高いところに上がりたがると言うが、社長室というのは、何故、一番上にあるのだろうな、と凛子は思った。
まあ、一階にあって、ガラス張りだったりしたら、警備員室や受付と変わりなくて、権威もなにもないか。
社長は凛子をその社長室の中の応接室に通してくれ、人払いをしてくれた。
「さあ、話を聞こうか」
と前に座り、社長は言ってきた。
いつもなら緊張する場面だが、そんなことも言ってはいられない。
「社長。
ちょっとお訊きしたいことがあるんですけど。
あの先程のエレベーターで昔、なにかありましたか?」
「いや、特になにもないが。
あったら、新聞にでも載ってるはずだろう」
と言われ、ああ、そうか、と思う。
「あの、蒼汰さんには、生き別れの双子とか、死に別れの双子とか居ませんか?」
「いや、居ないが」
言いながら、まあ、あの顔は蒼汰の顔を借りているだけだと言っていたし、その線はないか、と思っていた。
本来の姿は、あのエレベーターの夢に出てくるものなのだろう。
蒼汰とは全然違う若い男。



