密室の恋人

「……ないですけど。
 凛子が危ない目に遭うと困るんで」

 ふうん、と言った弥は何故かそこで、蒼汰の服に顔を近づけてきた。

「なっ、なんですかっ」
と身を引くと、

「僕、匂いに敏感なんだけどさ。
 蒼汰くんは、いつもいい匂いがするんだけど、なんだか最近、それがちょっと嫌な感じなんだよね」
と首を傾げてみせる。

「あの霊のせいとか?」

「うーん。
 そうなのかなあ」

「凛子が好きだからとかじゃないですよね」

 凛子を好きになったので、今まで自分を好ましく思っていたのが、疎ましくなってきたとか、と思う。

 いい匂い、そうじゃない匂いというのは、所詮、感情と好みで判断するものだし、と思う。

 上の段に居た弥は一瞬、虚を突かれたような顔をしていたが、手を叩き、

「いや、そうなのかなあ。
 あー、そうかもねえ」
と呟いていた。

「ありがとう、蒼汰くん。
 教えてくれて」