蒼汰は釈然としない表情のまま、階段を下りていた。
何故か弥まで付き合って、階段を下りてくれる。
蒼汰が黙っているせいか、弥が珍しく弁解してきた。
「エレベーターが大きく揺れて止まったんだよ。
今回は、本当に危なかったんだよ」
今回は?
前回は単に下心があったというわけだな、と思う。
まあ、あのときは、ズバリ、キスしていたわけだが。
そう思いながらも、こちらもある意味、弁解らしきものを言った。
「それで機嫌が悪いんじゃないです。
いや、悪くないこともないですけど。
凛子があそこでああして、貴方と居たのは、なにか理由があるんだろうとすぐに思ったから」
ところが、弥は、
「あ、そんなに物分りがいいとちょっと可愛くないよね」
と言い出す。
「本当は、単にエレベーターで逢い引きしてたんだよ」
「……どんだけ天の邪鬼(あまのじゃく)なんですか」
と蒼汰は足を止め、振り返った。
「凛子にはなにも調べるなと言ったのに」
と冷たい手すりに手を置き言うと、
「調べられると困ることでもあるわけ?」
と言ってくる。



