密室の恋人

 いや、そうですよ。

 しっかりして、と思うと同時に、やっぱり、この人、私のこと、好きでもなんでもないな、と思っていた。

 そもそも、本当に好きだったら、こんな気軽にデートとか結婚とか言えないだろうし。

 ましてや、いつも、何処へデートするんだとか訊いては来ないだろう。

「いや、お前は綺麗だし、感じも悪くないから、誰か居るんだと思ってた」

 いや、だから、そう思ってたんなら、誘うのおかしいですよね?

 と思いながも、蒼汰の自分に対する感想がそれ、というのが不思議だった。

 いつも喧嘩を売ってくるばかりだったのに、そんなこと思ってたのか、と驚いた。

 蒼汰は腕を組み、真剣な顔で考えている。

「それだけ美人でスタイルもいいのに、何故、今まで相手が居なかったんだ。

 ちょっと変わってるからか」

「いや、だからあの、貴方以上に変わってる人、あんまり居ないと思うんですけどね」

 やっぱり、失礼な奴だ、と思っているうちに、電車は埠頭近くの駅に着いた。