密室の恋人

『おや?
 僕たち両思いだったの?

 じゃあ、今からでも付き合ってみる?』

 あんなこと、今まで、冗談でも言えなかったな、とふと思った。

 そして、少し笑う。

「なんだよ。
 なに思い出し笑いしてんだよ」
とジョッキを手にした友人に肩でつつかれたので、

「いや、また、園田に振られちゃってさ」
と言うと、

「……何故、笑う」

「お前、まだ園田だったのか。
 しつこいぞ」

「本気じゃないなら、誰かひとり分けろよ」
と口々に渋い顔で言ってくる。

 最後のひとりに、
「お前、結婚してるだろうが」
と言うと、

「たまには俺も息抜きがしたい」
と言ってくる。

 それ、息抜きになるか? と思った。

 浮気したら、壮絶な地獄が待ってそうだが。

 僕は……

 結婚したら、きっと浮気とかしないな、と思う。

 そのために、今、フラフラしてるわけじゃないけれど。

「まあ、今日はゆっくり呑め」
と隣の友人が肩を叩いてくる。

「おねえさん、おかわりねー」
と弥のジョッキを持って、店員に向かい、振っていた。