密室の恋人

「なんでよ」
と千尋はまた文句を言ってくる。

「だって、凛子ちゃん、今、一番の僕のお気に入りだから」

 ああ、蒼汰くんもね、と付け加える。

 千尋は窺うようにこちらを見、
「凛子、なんで怪我してたの?」
と訊いてきた。

 今朝の給湯室での会話をある程度、聞いていたようだ。

「ああ。
 僕が電車で女の子に刺されそうになったのをかばってくれたんだ」

 上村、と呆れとも、なんともつかない顔で、呼びかけてくる。

「……あんた、いい加減にしときなさいよ」

 そんな忠告じみたことを言ってくるので、
「園田が僕を振ったから悪いんじゃない」
と言ってやる。

「そう?
 私は私が振られた気がしてたんだけど」
と言う千尋に、

「おや?
 僕たち両思いだったの?

 じゃあ、今からでも付き合ってみる?」
と言ってみたが、千尋は答えなかった。