密室の恋人

 


「やあ、凛子ちゃん」
「うわあ、追い払った人が現れた」

 つい、そう口から出してしまうと、なにそれ? と弥は苦笑いする。

 片腰に手をやり立つ姿が、少し千尋と似てるな、と思ってしまう。

 受付に用があったので、総務から階段で下りていたら、途中の踊り場で、弥に出会ったのだ。

「いや、此処に居たら、現れると思って」
と言うので、

「暇なんですか」
と言うと、

「いやいや、忙しいよ。
 お昼、蒼汰くんと一緒だったんでしょ。
 
 ご飯今度奢ってあげるって言ったじゃない。

 いい日、決めてくれた?」
と言ってくる。

「いや、蒼汰さんが貴方にはもう近づくなって。

 っていうか、なんで、蒼汰さんとお昼出かけたの、知ってるんですか?」

「だって、君らの動向、社内全体で見張ってるよ。
 どうなるのかなあって」

 そういえば、レジで蒼汰さんの部署の先輩と一緒になったな、と思う。

 会社を一緒に出て行くところも誰かに見られていたのだろうし。

「そうですか。
 まあ、いいですけどね」
と言うと、

「余裕だね」
と言う。

「社内恋愛って、だいたい、内緒にしとかない?」