密室の恋人

 


 真夜中、騒々しい音がして、凛子は目を覚ました。

 だが、それは既に予想していた出来事だったので、特に驚くこともなく、ベッドから降り、弟の部屋へと向かった。

 ドアを開けると、廊下の明かりの差し込む室内で、蒼汰が腕を引っ張りながら、文句を言ってくる。

「凛子ちゃんっ、なにこれっ?」

 腕を組み、欠伸を噛み殺しながら凛子は言った。

「手錠です」

 見ればわかるよっ、と怒鳴られる。

 蒼汰は、いや、蒼汰の身体はパイプベッドの頭のところに手錠でつながれている。

「なにをしたら、こうなるわけっ?」

 いや、なにかしてたから、こうなったわけじゃなくて、貴方を封じ込めようとしたんですけどね、と思った。

「蒼汰さんが寝たあと、貴方が出てきたらいけないので」
と言うと、

「ひどいなあ」
と彼は言うが、いや、人の身体を乗っ取るのはひどくないのだろうか、と思った。

 おかけで、蒼汰はいつも、うっかり寝たりしないよう、気をつけておかなければならなくなった。

「あのー、あんまり、蒼汰さんが寝たあとで、出てこないでくださいよ。
 蒼汰さんがゆっくり眠れないじゃないですか」
と言うと、

「蒼汰にばっかり気を使うんだね。
 最初は僕の方が好きだったくせに」
と言う。