密室の恋人

「違うだろう。
 そこはお前が罵られるところだ。

 うちの息子をそそのかして、不良にしたとか」

「不良って年ですか。
 その年だったら……なんて言うんでしょうね。

 やさぐれてる?」

「違うだろ……」

 言いながら、やさぐれてるのは、上村さんの方かな、と思っていた。

 見た目はあんなに物静かで紳士的なのに。

 中身は拗ねてる少年みたいだ。

 少し笑うと、運転席側に行きかけた蒼汰が車越しにこちらを見、
「……今、他の男のこと、考えてたろ」
と言う。

「考えてませんよ」

「嘘つけ」

「なんか女子力高い人のことを考えてました」
と言うと、はあ? と言う。

「蒼汰さん」
 車のドアを開けながら、蒼汰がこちらを見る。

「大好きです」

「……どうした、突然」

 さっき、弥にキスされてわかった。

 蒼汰にされたときとは、全然違っていた。

 どちらも驚いたけれど、蒼汰のときは、こんな風に、淡々となにか事情があるのだろうと受け流すことはできなかった。

 あのエレベーターの人が言うように、やっぱり、私は最初から蒼汰さんが好きだったんだと気づいたのだ。