密室の恋人

 特に男の人は仕事の面で張り合ったりして、ライバル意識が強いから。

「なんか、私のイメージの中では、上村さんは、仙人なんですよ。

 杖持って、桃持ってる感じです」
と言うと、蒼汰は笑う。

「それ、明日言ってやれ」
と言って。

 それにしても、めちゃめちゃ楽しそうだが、原因は私ではない気がする、と思っていると、蒼汰はポケットから、それを出してきた。

「見ろ」
とICカードを出してくる。

「初デートのお祝いにと買ってもらったんだ」
と嬉しそうだ。

「お前は持ってるんだったな」

「はあ。
 一応」

 電車通勤ではないが。

「よし、乗ろう乗ろう」
とまた手を握ってくる。

 わずか二駅、電車に乗っている間、蒼汰は実に機嫌がよかった。

「やっとわかりましたよ。
 ……庶民的に電車、とかじゃなくて、貴方、単に、電車に乗りたかったんですね?」

「昔、乗ったことはあるぞ。

 槙村が連れていってくれた。
 社会見学だと言って。

 でも、電車はおかしな人も乗ってくるから、普段は乗るなと槙村が」