密室の恋人

 手を握ったときに、絆創膏に気づいたらしい。

 蒼汰は絆創膏の貼られた手を持ち上げ、
「おちおち仕事もできないな」
と溜息をつく。

「目を離してる隙に、なにをやらかすかわからないから」

「ご、ごめんなさい」

「いや……心配してるだけだ」

 叱られずに、そう言われ、余計に申し訳なくなる。

「それにしても、付き合い始めなのに、命がけで、他の男をかばって刺されるとか、どうなんだ」

「刺されたってほどでもないですよ。
 かすっただけです」

 自分でも気づかなかったほどだ。

 やはり、上村さん、女子力高いな、と思っていた。

 繊細で、些細なことにもよく気がつく。

「蒼汰さん」
「なんだ」

「あの、私、蒼汰さんのことも命がけでかばいますよ。
 絶対」

 そう宣言する。

 何故か、あのエレベーターが頭に浮かび、知らない間に手に力がこもっていた。

「いや、お前、それ、俺が危険な目に遭うの前提だろう。

 あまり嬉しくない」

 そう言いながらも、蒼汰は少し笑っていた。

 つないだままの手を強く引っ張り、蒼汰が歩き出す。

「今日も帰らないからな」

「なんの宣言ですか。
 家出息子とお母さまに罵られますよ」