密室の恋人

 




「そ、そうですか」
と言った凛子の目に、信号で止まっている蒼汰の車が見えた。

 あ、と立ち上がろうとしたが、弥にいきなり手をつかまれ、よろける。

 ベンチに腰を落とした瞬間、弥が口づけてきた。

 なにが起こったのか、理解できなかった。

 弥はすぐに離れ、立ち上がると、笑って言った。

「ナイフ出してくる人間には反応速いのに、こういうときは速くないね。

 おやすみ、凛子ちゃん。
 いつも慰めてくれてありがとう」

 ちょうど来た空車のタクシーを止め、行ってしまう。

 たぶん、弥には見えていたのだ。

 蒼汰の車も、それが赤で止まっている間にこの前に滑り込むだろうタクシーも。

 既に弥の姿の消えたロータリーを呆然としたまま見ていると、誰かに肩を叩かれた。

 車を止めてきた蒼汰だった。