密室の恋人

「私も昔は、ハンカチ、ティッシュと絆創膏とソーイングセットは絶対持ってたんですけど、最近はあんまり」

「僕もたまたま入ってただけだよ。
 この間、会社で紙で指切ったから。

 ああ、それより、君に怪我なんかさせちゃって。

 僕、蒼汰くんに刺されちゃうよ」

「いやあ、猫に引っ掻かれたって言いますよ」

「無防備に野良猫に近づいていきそうだもんね」

 僕にこうして、警戒もせずに近づいてきて、親切にしてくれるみたいに、と思った。

 弥はホームの上の星空を見上げて言う。

「あーあ。
 終電だったんだよね、今の」

「そうなんですか。
 じゃあ」

 タクシーで帰りましょうか、と彼女が言う前に言った。

「どっか泊まってく?」

「……笑顔でなに言ってんですか。
 此処からなら、歩いてでも帰れますよ」

「僕は帰れないよ」

「じゃあ、うちに来ますか?」
と凛子は言ってくる。

「え、本気?」