密室の恋人

 



 凛子が女の手を引き、いきなり電車を降りたので、弥はテンポについて行きそびれ、一人が乗客たちの視線を浴びながら、次の駅まで行ってしまった。

 なんで、あっちを下ろしてかばうのやら。

 本当に、凛子は可笑しい。

 みんなに好奇の目で見られながらも、弥はひとり、今、凛子に引きずり下ろされて、唖然としていた女の顔を思い出して笑っていた。

 逃げるのよってなんだろうな、と思いながら。

 次の駅に着くと、すぐに下りの電車が来たので、乗り換え、凛子の許へと戻る。

 女はもう居らず、凛子はひとり、ベンチに座って、電車も人も居ない、ただ明るい向かいのホームを眺めていた。

 階段を下りてきた弥に気づき、睨んでみせる。

「他所の人にしか手を出さないって言ってたのに。
 通勤電車の人じゃないですか」

 いつも電車で一緒になっていたと女は言ったようだった。

「うーん、そうだね。
 通勤圏内の人にはもう手は出さないよ」
と言うと、そういう問題ですか、と凛子は言う。

「それにしても、反応速かったね。
 なんで、わかったの?」