密室の恋人

 女を連れて降りた瞬間、扉が閉まる。

 弥がガラス越しに慌てたようになにかを言っていたが、もう聞こえなかった。

 電車が東に遠ざかったあとで、女が、ぽつりと言う。

「あんた、なにやってんの?」

「あ、ごめんなさい」
と凛子は手を離して言った。

「上村さんのために犯罪者になるのはやめた方がいいかと思って」

「なんで?」

「うーん。
 いい人だけど、ろくでなしだから?」

 そう言うと、女は少しだけ笑ったようだった。

「あんたも、あのろくでなしに騙されてるの?」

「私はただ、一緒にカレーを食べに行っただけ。
 好きな人は別に居るから」
と言うと、カレーか……と女は弥の消えた線路を見ながら呟く。

「一度もそんなとこ行かなかったな――」