密室の恋人

 



 蔦のからまったその店に入ると、本当にオーダーストップ、ギリギリだった。

 閉店も近いので、急いで食べる。

 しかし、ケーキまでしっかり食べた。

「ああ、美味しかった」
と凛子が笑うと、

「ほんとに、いい呑みっぷり、食べっぷりだね。
 蒼汰くんの前でもそうなの?」
と弥が訊いてくる。

「……いけませんか?」
と上目遣いに見て問うと、いや、と笑っていた。

「さっきも言ったじゃないですか。
 人間無理は続かないんですよ」

「まあ、そうだよね。

 ああ、此処は、僕が奢るから。

 いや、文句は言わさないよ。
 僕の気が済まないんだよ」

 静かだが、迫力のある口調に、つい、はい、と言ってしまう。

 弥がレジに行ったので、立ち上がったまま、その場で携帯を確認していると、テーブルを片付けに来た若い女性店員が凛子に言った。

「あ、ご主人、お忘れですよ、携帯」

「は?」
と携帯から顔を上げる。

 見ると、弥の携帯を差し出されていた。

「……ありがとうございます」

 わざわざ否定するのもな、と思い、それを受け取った。

 しかし、何故、ご主人に見えたのだろうな、と思いながら、レジの弥を見遣る。