密室の恋人

 



 弥と二人、電車に乗って、千尋の家へと向かった。

 電車に乗って、話しているとき、視線を感じた。

 誰だろう? と振り向いたが、誰とも目が合わない。

 みんなスマホをいじったり、寝たりしている。

「どうかした? 凛子ちゃん」

「いえ……」

「電車と言うと、思い出すよね。
 蒼汰くんにデートのアドバイスしたときのこと。

 まあ、電車以外、なんにも守らなかったみたいだけどね……」

「はあ、まあ、そういう人なんで。
 それに、無理をして自分を変えてデートしても、後が続かないですよね」

 そう笑うと、弥がこちらを見下ろした。

 普通の人なら無理をしているのであろうクルーザーでのデートとか。

 あの人にとっては、それが普通のことなのだ。

 まあ、電車も喜んでたけど。

 そして、ふと思った。

 蒼汰の母があのチェーン店を指定してくれたのは、こっちが気後れしないようにだったのかな、と。