密室の恋人

 


「蒼汰くん、まだ?」

 ガラス張りのドーナツ屋の店内で、携帯を確認していた凛子に、弥が訊いてくる。

「はい。
 今日は遅いですね」
と言うと、

「浮気かな?」
と楽しそうに訊いてくる。

「……笑顔で言わないでくださいよ」

 そう力なく言うと、嘘だよ、と弥は言った。

「蒼汰くんは、嘘をつけない人間だからね。
 まっすぐだし。

 今は、凛子ちゃんにメロメロ。

 まあ、この先のことはわからないけど」

「あの……ちょいちょい嫌味を交えてくるのは何故ですか」

「それは僕が今、不幸だから。
 幸せになったら、全力で応援してあげるよ。

 ほら、自分がハッピーなら、他人の恋にも余計な口出して、まとめてあげようかなとか思うじゃない」

「ああ、それ、この間、蒼汰さんに言われました」

 まあ、弥と千尋は、どう手を貸してもまとまらないし、まとまってくれても、千尋の家庭的には困るのだが。