密室の恋人

「駄目みたいです」
と言うと、弥も自分がかけていた携帯を切った。

「明日が誕生日とか言ってたから、早く渡してあげた方がいいかもしれない。

 僕、園田たちと連絡つくまで、その辺で珈琲でも飲んでるよ。

 僕ももう帰るつもりだったから、何処行くのか訊いてないんだよね」

「そうなんですか」

 もうちょっと付き合うのかと思っていた、と言うと、弥は眉をひそめ、
「だって、これ以上、園田ののろけを聞かされたら、具合が悪くなるからね」
と言う。

「あ、まあ、確かに」

 千尋は旦那の愚痴を言っているつもりなのだろうが、端から聞いていると、のろけにしか聞こえない。

「これ以上、お金払って気を使って、しんどい思いするの、やだからね」

 渋い顔で弥は言う。

 そ、そうですね、と思いながら、凛子は、
「じゃあ、付き合いますよ、珈琲」
と言った。

「上村さんが一人で飲みたいんじゃなければ」

「この上、一人でとか寂しいことしたいわけないじゃない」

 はは……と苦笑いし、すぐ近くのドーナツショップまで付き合うことにした。