密室の恋人

「大変。
 届けないと」
と顔を上げたが、ガラスの向こうに見えた、千尋たちのグループはタクシーに乗って何処かへ行くところだった。

 他のメンバーももう居ない。

 すぐに弥が電話していたが、みんな盛り上がっているのか、誰も携帯が鳴っているのに気づかないようだった。

「ああ、タクシー曲がってっちゃいました」

 道路に出、そう言ったとき、空車になっているタクシーが目の前を走って行った。

「あっ。

 もうちょっと早く出られてたら、あれ、一度、やってみたかったのにっ」
と小さく叫ぶと、弥は笑い、


「あの車を追ってくださいって?」
と言う。

「なんでわかったんですか」

「だって、凛子ちゃんの考えそうなことじゃない」
と言いながら、別の友人に電話しているようだが、やはり出ないようだった。

 凛子も美晴の携帯を鳴らしてみた。

 すぐにつながったのだが、幾ら呼びかけても返事はなく、みんなの笑い声と、誰か男の人が大きな声で熱唱しているのしか聞こえてこない。

 鞄の中で、なにかに当たって、たまたま、つながっただけなのだろう。