密室の恋人





 夕方、当初、総務で呑み会に出る女子全員で、同時に出発する予定だったのだが、至急、データを打ち替えて欲しいと部長に頼まれ、一番打つのが速い凛子が残された。

 あー、急いでいかなきゃ、出遅れた。

 私の好きな大根サラダ、まだ残ってるかな。

 仕事を終えた凛子は慌てて階段を駆け下りる。

 エレベーターを使わないのにも、少し慣れてきた。

 だが、人気のない夜の階段は少し怖い。

 踊り場で、ふと足を止める。

 下の踊り場に、あのグレーのスーツを着た背中が見えた気がして。

 ……社長に聞いてみようかな。

 ふとそんなことを思った。

 蒼汰さんのお母さまはなにもご存知ないようだった。

 でも、社長なら、なにか知っているかもしれない。

 此処のエレベーターで、過去なにがあったかを――。