密室の恋人

「凛子」

「……私、あの人、怒らせちゃたんです。

 ごめんなさい〜っ。
 うまく話を聞き出したかったのに。

 どうしよう。
 あの人が蒼汰さんの身体を乗っ取って、高いところから飛び降りちゃったりとかしたらっ」

「おい、待て……。
 今もあいつ聞いてんじゃないのか。

 そうか、その手があったかと思われたらどうしてくれる」
と言うと、あ、と間抜けな凛子は口許に手を当てた。

「だ、大丈夫ですよ。

 あの人、賢そうだから、そんなのとうの昔に思いついてますよ」
と嬉しくもないことを誤魔化すような笑顔で言ってきた。

「それに、たぶん、あの人、蒼汰さん以外の身体は乗っ取れないんです。
 だから貴方を殺したりしません」

 そう凛子は言い切った。

「あいつになにか言われたか?」

「え?」

「あいつはお前になにも教えてくれなかったのか?」

 凛子は黙っている。

「お前、あいつに関して、俺も知らないなにかを知ってるんじゃないのか?

 だから、必死になにかを聞き出そうとしてる」

「そんなことないです」

 そう言う凛子の表情にいつもの明るさはなかった。